ハウスビルドを生業としているイギリス生まれオーストラリア育ちのオーナー様が建てる2件目の自邸。
1件目は自社で木造住宅を建設されコンクリ―ト造住宅の生活も体験されたいという事でご依頼されました。
敷地は沖縄県本島中部。県内最大の米軍基地があり街として発展しながらも田舎ののどかさも残る美しい川や緑に恵まれた地域。南側に接道、北側は崖に接し、眼下には深い緑に囲まれた比謝川、景勝が望める高台の敷地となっており、堅固な地盤で道路よりも半階分盛り上がっていました。
ガレージと玄関部分を道路高さに合わせて少し掘り込み、あとは堅固な地盤に平屋を載せる形のプラン構成としています。オーナー様が一番にご希望された景色をとり込む展望テラスは、片持ち構造で崖地の地盤に影響しない形とし、風をとり込むために東南のガレージ上部に配置した光庭は、敷地高低差から生じる高さの不具合を調整する役割も果たしています。
現在9割を超える住宅がコンクリート造の沖縄。深い庇、南から風を取り入れる配置、屋根裏の空気層、工法や造りは、戦後発展してきたコンクリート家(コンクリートヤ―)の内容を踏襲しています。さらに天井材裏にグラスウールの採用、床下は無くタイル仕上げ、ハウスプール設置、オーナーが足繁く通う東南アジアの蒸暑地域での経験で得た快適に涼を得るための工夫が加えられています。タイル、石、オールドチークの建具と家具、良質な建材はオーナー様とともにバリで買付けいたしました。
東アジアの中心に位置し資源の少ない小さな島の沖縄は、かつて交易を行うことで国力を高め豊かに暮らしてきた歴史があります。幾度となく他文化に侵略されても柔軟性と逞しさで自分達の文化へと昇華してゆくことで伝統を守ってきました。情報の高度化、交通手段の発展で全世界的に対抗文化を失くしつつある今の時代だからこそ、沖縄のアイデンティティとは何か、考えてゆきたいと思っています。