Works

Ak house  2020.10.18

Concept

「ゲニウス・ロキ(genius loci)」とはラテン語のゲニウス(守護霊)とロキ(土地・場所)を合わせた言葉で「地霊」と訳される。 18世紀のイギリスで生まれた、どの土地や場所にもそれぞれ特有の霊があり、その霊の力に逆らわず建物を建て地域開発すべきという考え方。沖縄のゲニウス・ロキとは。

沖縄県本島南部の新興住宅地に建つ邸宅。ビジネスでの接客やお子さん達の海外交換留学生の受入れ、事業家であるオーナーとご家族がホストハウスとしての住まいをご希望され建てられた、家族の器としての機能を越えて社交の場としての役割も求められた住宅である。 周辺は開発途中の森が残り、既に開発された場所には将来的な立地を見越した投資と見受けられる大型アパートが建ち並び、民家としての住宅地を感じさせない風景が広がっていた。

覆われてゆく地霊との強いつながりを導くひとつの帰結として、中庭を有する沖縄の伝統的な古民家の間取りを踏襲している。 大きな中庭の右手は上座にあたる和室、下座としての左手に、アートギャラリーとしての役割をもつ廊下からつながるプライベート個室を配し、正面は表座(一番座・二番座)にあたるリビングとした。かつての沖縄は庭や自然との繫がりの深い空間で客人を迎え入れおもてなしが行われてきた。3mの広庇が内部と外部の境界を曖昧にし、中庭や表座を通して直接人を迎え入れる沖縄の暖かいおもてなしの要素を持つお宅となっている。

沖縄は石を好み積む文化も有する。悠久の繁栄を願い、木の垂木を石で擬した建造物も存在する。戦前の琉球石灰岩、戦後のブロック塀、戦後発展したRC構造。外装は杉板本実型枠、ピンプン壁(目隠し壁)にレンガを積み、琉球石灰岩はおもてなしのための内部空間へ採用した。伝統的な古民家にはない現代の玄関空間には敢えて石貼りを省いている。

元々曖昧な「何か」が「失われてしまうのではないか」という危機に至ることで、逆にその存在意義が問われ強い体系が生まれる。アイデンティティとはアイデンティティ・クライシスに際して確立する、とある建築家は言う。地霊を点と点で結び、アイデンティティを見つめた建築を創ってゆきたい。

イメージCGを見る→ 

Ak house